類推処罰と拡張解釈
罪刑法定主義では、類推処罰を禁止するものであると考えられています。類推処罰というのは、ある行為が犯罪として刑法上の規定をされていなかった場合に、類似した性質の行為の処罰規定した法律を用いて解釈・適用し処罰を下すことです。かつての律令では、該当する条文がない場合、近似の条文を類推して処罰することを認めていました。これを延引比附というのですが、罪刑法定主義のもとでは、このような処罰ができないのです。
罪刑法定主義には、国民の意思に基づいた法律を用いて処罰するという民主主義的側面と、あらかじめ処罰対象となる行為が予測できる状態とする、自由主義的な側面があります。しかし、類推処罰を認めるということは、裁判官の解釈次第で新しい刑罰法規を設けることで処罰する行為といえますし、そのような行為を行うと、どのような行為が犯罪で、どのような行為を行っていいのかという境界線が不明確になることにもなり、結果処罰対象の予測ができず、自由な行為を行う機会が抑制されることになります。
あくまで、国民の権利を不必要に制約することが許されないことから、この類推処罰の禁止の原則が存在しています。つまり、類推解釈による不処罰については、たとえそれを行ったからといって、国民の自由や権利を制約するような行為ではなく、拡大する行為ですので、認められています。
類推処罰は禁止されているのですが、刑罰法規を拡張解釈することで行う処罰は罪刑法定主義に反しないとされています。拡張解釈というのは、法律の言葉をその言葉の日常的な意味よりも拡張して解釈することです。
これは、法律の制定当時と比べ、科学技術の発展や社会の変化といった要因で、制定段階では予想できなかった事態が生じるからです。新たに表れる技術や文化を毎回毎回、法律によって規定し対応していくことは、大変難しく、又面倒です。そのため、文面上から読み取れる範囲で解釈することでそういった事態に対応するのです。このこと自体は、法文の刑罰規定をきちんと用いた解釈となりますので、国民の処罰意思を超えて処罰を科すことにはなりませんし、文面条解釈可能な範囲となりますから、国民の予測を超えた予測不能な処罰となることもありませんので、拡張解釈は罪刑法定主義に反しないとされているのです。