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刑法の役割に対する考えかた

憲法13条、有名な言い方ですと幸福追求権ですが、この13条では「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定められています。そのまま解釈しますと、この13条の規定は、国民一人一人に人間としての尊厳と、生命、自由幸福を追求する権利の尊重と保護を立法と国政に求めているという印象を受ける内容になっています。それだけでなく、「公共の福祉」による制約を受ける可能性も示唆しています。

公共の福祉というのは、誰かの人権と他の誰かの人権がぶつかった場合、そこに生まれる矛盾や衝突を調整するための原理であるとされています。つまり、ある正当な人権を保護するためにほかの正当な人権を制約するようであれば、その人権を制約することが許されるだけの根拠が「公共の福祉」であるとされているのです。刑罰も人の人権を制約する性質を持ちます。公共の福祉の見地から刑罰についても考えてみますと、刑罰を用いる場合でも、人権を制約する特徴を持つ以上、他の人権を保護するために必要で、かつやむを得ない場合に限られていると考えることができます。憲法13条から刑法の役割を考えてみますと、個人の生活利益の保護にその役割が置かれることになります。個人法益保護という原則は、法によって保護される利益、つまり法益の保護を個人の生活利益においていることから生まれた原則です。

個人法益を保護するということは、法益を侵害するあるいは危険にするような行為を犯罪とすることで処罰の対象とする必要があります。言い方を変えますと、たとえ不道徳あるいは社会的に照らしてみて問題のある行為だとされるような場合でも、個人法益を侵害しなければ処罰するべきではないということもできます。

個人法益保護の原則のもとでは、刑罰の対象となるのは、あくまで個人の生活利益を侵害するような行為に限られ、それ以外の行為は処罰対象とならないという原則が侵害原理の原則といいます。この原則では、刑法の役割を倫理や道徳の維持に見出し、刑事罰の対象をこの倫理道徳の維持に反するような行為としている「リーガル・モラリズム」の考え方と大きく異なっています。